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課題のカリキュラムを読む3つの問い|スラトレ®成長ワーク

通り過ぎた困難から、自分にとっての学びを取り出す。本記事では、医師が、人生のカリキュラムを読み解いていく具体的な3つの問いと、続けるためのコツをお伝えします。同じ課題が繰り返し戻ってきていると感じる方にこそ、読んでいただきたい内容です。

Q1. なぜ「読み終わった本を、もう一度開く」必要があるのか

困難を通り抜けたあと、ほとんどの人は、すぐに次の困難に向かっていきます。

立ち止まって振り返る時間を持たない。なぜなら、振り返る時間そのものが、贅沢に感じられるからです。「やっと終わったのだから、早く忘れたい」「次の問題が待っている」── そう感じるのが自然です。

けれど、振り返らないまま次に進むと、ある時、こんな瞬間が来ます。

「あれ、これ、前にも取り組んだ気がする」。

通り抜けたはずの困難と、よく似た構造の出来事が、形を変えてもう一度目の前に立つ。同じ場所に、立っている自分。

なぜこんなことが起きるのか。それは、通り抜けた困難から「学び」を取り出さないまま次に進むと、その困難は心の中で「読み終わった本」にならないからです。読み終わったように見えて、実は最後の章を読んでいない。最後の章には、自分にとっての本当のテーマが書かれている。それを読み残すと、似た本がもう一度、本棚に並ぶことになります。

ここで多くの方は、こう感じます。「学びを取り出す、と言われても、何を取り出せばいいかわからない」。

それは正常です。

通り抜けた直後は、感情の温度が高すぎて、学びの輪郭が見えません。一方、時間が経ちすぎると、出来事の細部を忘れて、抽象的な反省しか残りません。タイミングが難しい。

本記事では、この「学びを取り出す」作業を、できるだけ簡単な3つの問いとして紹介します。完璧に書ける必要はありません。一行でも構いません。

Q2. 経験の意味抽出という考え方

問いに入る前に、ひとつ言葉を共有させてください。

これから紹介する3つの問いは、すべて「ある一つの作業」を進めるためのものです。

その作業は、料理に似ています。

料理を作ったあと、ほとんどの人は、すぐ食べて、すぐ片付けます。けれど、ときどき「あの時の料理、何を入れたら、あんなにおいしくなったんだろう」と思い返す時があります。その時、メモを取る人と、取らない人で、その後の料理の腕は変わっていきます。

メモを取る人は、出汁の濃度、火を止めるタイミング、最後に加えた調味料 ── そういう具体的な要素を取り出して書き留めます。すると、次に同じ料理を作る時に、最初からおいしくできる。応用も効くようになる。

メモを取らない人は、毎回ゼロから作り直すことになります。「前にもおいしくできたことがあったはず」と思いながらも、何が決め手だったか思い出せない。だから、毎回、同じ場所でつまずく。

人生の経験も、これに似ています。通り抜けた困難から、何が決め手だったのか、その時の自分を支えたのは何だったのか、何を見落としていたのか ── そういう要素を取り出していくと、次に似た困難が来た時の対応が、変わっていきます。

この、通り過ぎた経験から、自分にとっての学びを取り出していく作業を、私は次のような言葉で呼んでいます。

【経験の意味抽出】(けいけんのいみちゅうしゅつ / Meaning Extraction)とは、通り過ぎた困難から、自分にとっての学びを取り出す作業のことです。

ポイントは「全部から学ぼうとしない」ということです。一回の経験から、たくさんの学びを取り出そうとすると、消化不良になります。一つの経験につき、取り出すのは1つか2つで十分。それを続けていくうちに、自分の人生の中で繰り返されているテーマが、ゆっくりと見えてきます。

ここから先の3ステップは、すべてこの経験の意味抽出を、無理なく続けていくためのものです。

Q3. 今日からできる3つの問い

ノートを1冊用意してください。スマホのメモでも構いません。

最近通り抜けた、または今ちょうど通り抜けつつある困難を1つ、思い浮かべてください。それは、人間関係でも、仕事でも、家族との出来事でも、健康のことでも、何でも構いません。まだ感情が熱すぎるものは、少し時間を置いてから取り組んでください。

ステップ1:この困難に、自分が一番反応していた瞬間を一行で書く

(目的:無数の場面の中から、最も核になる瞬間を取り出す)

困難の渦中には、いろんな場面があります。腹が立った場面、絶望した場面、誰かに優しくされた場面、自分を恥じた場面 ── 全部書き出そうとすると、終わりません。

そこで、こう問いかけます。

> 「この困難の中で、自分が一番強く反応した瞬間はどこか」

そして、その瞬間を、一行だけ書いてください。

書き方の例:

  • 「会議で相手から『甘い』と言われた、あの一瞬」
  • 「夜中に独りで台所に立っていた、あの夜」
  • 「医師から検査結果を聞いた、あの瞬間」

ここでのコツは、出来事の詳しい説明を書こうとしないことです。一行だけ。場面を切り取るだけ。

ステップ2:書いた一行を読み返して、声に出して問いかける

(目的:その瞬間が、自分にとって何を意味していたのかを引き出す)

書いた一行を、静かに声に出して読んでください。そして、続けてもう一文だけ問いかけます。

> 「あの瞬間、自分の中で動いていた本当の気持ちは何だったか」

声に出すのが大事です。声に出すと、頭の中だけで考えていた時とは違う温度で、その問いが自分に届きます。頭の中だけだと、優等生の答えしか出てきません。声に出すと、本音が出やすくなります。

書き方の例:

  • 「本当は、ずっと認めてほしかったんだ」
  • 「本当は、あの夜、誰かに電話したかったんだ」
  • 「本当は、自分の身体を、もっと大事にしたかったんだ」

ある経営者の方は、私との面談でこう話されました。「会社が大きく揺らいだ時期を通り抜けたあと、この問いをやってみた。書いた一行は『深夜に独りでオフィスに残っていた、あの夜』だった。声に出して問いかけたら、出てきた答えは『本当は、独りで全部背負わなくていい人生にしたい』だった。20年間、自分の中で言葉にしていなかったことが、初めて声になって出てきた」と。

これは、決して特別な体験ではありません。同じような声を、面談の場では何度もうかがってきました。

ステップ3:今日からの自分に、一文だけ、約束を渡す

(目的:取り出した学びを、未来の自分の行動につなげる)

ステップ2で出てきた答えを、もう一度読み返してください。そして、最後にこう書きます。

> 「これからの自分は、〇〇していく」

書き方の例:

  • 「これからの自分は、独りで全部背負わない選択を、選んでいく」
  • 「これからの自分は、夜中に独りになった時、誰かに連絡することを、自分に許していく」
  • 「これからの自分は、身体の小さなサインを、後回しにしないでいく」

ここで大事なのは、「強くなる」「乗り越える」といった大きな言葉を使わないことです。「〇〇していく」のレベルでとどめてください。一回でできるようにならなくていい。「していく」と書くだけ。それで十分です。

これが、3ステップです。一行で切り取る、声に出して問う、未来への約束を一文書く。それぞれ1〜2分。合わせても5分以内です。

Q4. 続けるためのコツ

完璧にやろうとしない

通り抜けた困難すべてに対してこの作業をやろうとすると、続きません。月に1回、印象に残った困難を1つだけ取り出してやる ── そのくらいのペースで構いません。3日続けば上等です。

古い困難から始めてもよい

最近の困難は、まだ感情の温度が高くて書きにくいことがあります。その場合は、5年前、10年前の、もう感情が落ち着いている古い困難から始めてみてください。古い困難の方が、輪郭がはっきりしていて、書きやすいことがあります。

そして、古い困難の中から取り出した学びが、最近の困難にも応用できることに気づく方が、多くいらっしゃいます。

書き溜めたノートは、捨てない

書き溜めていったノートは、半年後、一年後に読み返してください。読み返すと、当時には見えていなかった意味が、後から立ち上がってくることがあります。「あの時の困難は、今の自分にとってこういう意味を持っていたのか」と、時間が経ってから気づくことがあります。

これは、自分の人生のカリキュラムを、自分で読み解く力を育てるプロセスでもあります。「自分の人生は、自分で読める」── そういう感覚は、誰かに与えてもらうものではなく、こうした作業の積み重ねの中で、ゆっくりと育っていくものです。※個人の感想であり、効果を保証するものではありません。

独りで抱え込まなくてよい

ここまで実践してみても、自分の人生の中で繰り返されている学びのテーマが、どうしても見えない、という方もいらっしゃると思います。それは、努力が足りないからではありません。自分のテーマは、本人にとって「あまりに当たり前すぎて」見えにくくなっていることが、しばしばあります。

シリーズ内には、理論編の人生のカリキュラムとしての困難|医師が解説する成長の構造、体験編のまた同じ課題が来た、と思った瞬間もあわせてご用意しています。関連する実践として、シチュエーションを鏡として読む3つの問い苦しみを気づきに変える3つの問い|スラトレ®哲学ワーク再現パターンを変える3つの問い|スラトレ®再設計ワークもご用意しています。独りで読み進めながら整理してみるのも、一つの選び方です。

それでも独りで進めるには重い、と感じる時は、専門家と一緒に整理する選択肢があります。

シリーズ核心記事としてシリーズ核心:待つ筋力を育てる最終実践|やえこふクリニックの選択肢もあわせてお読みください。


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やえこふクリニックでは、経営者・医師・リーダーの方向けに、心の奥にあるテーマと向き合うパフォーマンストレーニングをご案内しています。Dr.EKO博士(医師・医学博士)が直接対応します。

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まとめ

  • 経験の意味抽出は、通り過ぎた困難から、自分にとっての学びを取り出す作業
  • 鍛え方は、一行で切り取る → 声に出して問う → 未来への約束を一文書く、の3ステップ
  • 1ステップ1〜2分、合わせて5分以内。一回で全部を取り出そうとしないのがコツ
  • 完璧を目指さない。月に1回・3日続けば上等
  • 独りで抱え込まなくてよい。専門家と一緒に整理する選択肢があります

監修:Dr.EKO博士(医師・医学博士・株式会社ヤエコフ代表)

免責事項: 本記事は、メンタル思考トレーニングおよびセルフケアに関する情報提供を目的とした内容です。医療行為・心理療法ではありません。重い症状が出ている方は必ず医療機関を受診してください。スラトレ®は、医師が開発したメンタル思考トレーニングです。

最終更新:2026年5月

Dr.EKO博士
Dr.EKO博士(YAEKOFU)
医師・医学博士。スタンフォード大学でEIを学び、スラトレ®(メンタル思考トレーニング)を創始。エグゼクティブ・医師・リーダーの心身パフォーマンス向上を支援しています。