「またこの場面だ」と気づいた時、何をすればいいのか。本記事では、目の前のシチュエーションを「自分への問いかけ」として読み解いていく、3つのシンプルな問いを医師が紹介します。
Q1. なぜ「読み解く」必要があるのか
似た場面が繰り返されていることに気づいても、たいていの人は、そこで止まってしまいます。
「気づいたから、もう大丈夫」と思って、次の場面に進む。けれど、しばらく経つと、また同じ場面が来る。気づいただけでは、現実は動かない。
なぜなら、気づきには2段階あるからです。
1段階目は、「ああ、また同じだ」という事実への気づき。
2段階目は、「この場面は、自分の何を見せているのだろう」という意味への気づき。
1段階目で止まっている限り、繰り返しは続きます。なぜなら、「気づいた」だけでは、心の底にある問いは、まだ言語化されていないからです。言葉にならないものは、現実の場面という形で、もう一度出てくるしかありません。
ここで多くの方は、こう感じます。「自分の何を見ているのか、と言われても、わからない」。
それは正常です。
心の底にあるテーマは、本人にとっては「あまりに当たり前」になりすぎて、自分では見えにくくなっています。だから、見えないまま放っておくと、いつまでも見えません。けれど、ある一定の手順で「問い」を立てると、輪郭が少しずつ見えてきます。
本記事では、その手順を3つの問いとして紹介します。今日からノート1冊と、10分ほどの時間があれば始められます。
Q2. 現実の読み解きとは何か
問いに入る前に、ここで一つ用語を整理しておきます。
目の前で起きている出来事には、表の意味と、奥の意味があります。
表の意味は、誰でも見えます。「会議で上司に否定された」「友人に約束をすっぽかされた」── 出来事の事実そのものです。
奥の意味は、人によって違います。同じ出来事でも、ある人には「軽くあしらわれた」と映り、別の人には「自分は重要じゃないと言われた」と映る。同じ出来事を見ているのに、心の中で立ち上がる感情の質が違う。
この「奥の意味」は、自分の中にあるテーマが、出来事に色をつけているから生まれます。色をつけている自分の側を、丁寧に見ていく作業 ── これを今回扱います。
家のリビングで、夕日が差し込んで赤く見える壁を想像してください。
壁そのものは白です。けれど、夕日が差し込むと赤く見える。「壁が赤い」と感じた時、その赤さは、壁にあるのではなく、光の側にあります。同じように、出来事に色をつけているのは、出来事そのものではなく、自分の中にある光の側 ── つまり、心の奥にあるテーマです。
この読み解き作業を、心理学では次のように呼びます。
【現実の読み解き】(げんじつのよみとき / Reading Reality)とは、目の前の状況を、自分への問いかけとして読み取る作業のことです。
「読み解き」というのは、ただ起きたこととして処理するのではなく、そこに何が書かれているかを読む、という意味です。出来事は、自分宛ての手紙のように、何かを伝えてきている ── そういう前提で読んでいく姿勢です。
ただし、誤解しないでください。これは「全ての出来事に深い意味がある」という話ではありません。読み解くに値するのは、3回以上、似た構造で繰り返されている場面です。1回や2回で意味を求めると、考えすぎになります。
繰り返されているものを、繰り返されているうちに、丁寧に読む。これが、本記事の3つの問いの目的です。
Q3. 今日からできる、3つの問い
ノートを1冊用意してください。スマホのメモでも構いません。最近起きた、似た感じのする場面を1つ、思い浮かべてみてください。
そして、その場面について、以下の3つの問いを順番に書いていきます。
問い1:この場面で、私の中に立ち上がっていた感情は、どんな種類のものか
(目的:表の出来事ではなく、自分の側の反応に焦点を当てる)
書き方の例:
- 怒りだったのか、悲しみだったのか、恥ずかしさだったのか
- どこで感じたか(胸、喉、お腹、背中)
- 強さは10段階でどのくらいか
ここでのコツは、「相手がどうだった」ではなく、「自分の中に何が起きたか」だけを書くことです。最初は、相手のことばかり浮かんでくると思います。それは正常です。浮かんできたら、「今は自分の側を見る時間」と意識して、自分の感覚に戻してください。
問い2:この感情は、人生の中で、いつ、どんな場面で初めて味わったか
(目的:今の場面と、過去の似た場面をつなぐ)
書き方の例:
- 子どもの頃、家で
- 学生時代、教室で
- 前の職場で
「同じ感情を初めて味わったのはいつか」を思い出してみてください。最初の場面が見つからなくても構いません。「最も古い記憶として残っている、似た感情の場面」で十分です。
ここでも、「思い出すのがつらい」と感じる方がいます。無理に深く掘らなくて大丈夫です。今、思い出せる範囲のことだけを書く。それで十分役に立ちます。
問い3:あの時の自分が、本当はしてほしかったことは何か
(目的:心の底にあるテーマを、言葉として取り出す)
書き方の例:
- 「ちゃんと話を聞いてほしかった」
- 「自分の気持ちを認めてほしかった」
- 「裏切らないでほしかった」
問い2で思い出した過去の場面で、その時の自分が、本当はどうしてほしかったか ── これを、できるだけシンプルな言葉で書いてください。難しい言葉は要りません。子どもが言うような、素朴な言葉で十分です。
ここで出てきた一文が、今、目の前の場面で繰り返し再現されているテーマです。
ある経営者の方は、この3つの問いをやってみて、こう書きました。
「あの時の自分は、ただ、ちゃんと見てほしかった」。
たった一行です。けれど、この一行が出てきてから、その方は、会議室で部下に対して「無視されている気がする」と感じる頻度が、ゆっくりと減っていきました。なぜなら、「無視されたくない」という反応の元にあったテーマが、本人の中で言葉として取り出されたからです。
言葉にならないままだと、心は同じ場面を呼び寄せて、テーマを見せ続けます。言葉になると、心は「もう見せなくても、本人がわかった」と判断して、出す回数を減らしていきます ── そういう傾向があります。
Q4. 実践を続けるコツ
この3つの問いは、1回で答えが出るものではありません。
書いてみて、何も浮かばない日もあります。書いている途中で、悲しみがこみ上げてくる日もあります。書き終わってから、しばらく何も変わらない日が続くこともあります。
すべて、よくあることです。
完璧にやろうとしないでください。週に1回、ノートを開くだけで、十分です。3日続けば上出来です。1週間に1度、似た場面が来た日に、書いてみる ── そのくらいのペースで、半年も続けると、自分の中の繰り返しのテーマが、少しずつ見えてくることがあります。
もう一つ大切なことがあります。書いて出てきたテーマが、思っていたより重たい場合があります。「自分の中に、こんなものがあったのか」と、書いた後でしばらく揺れる方もいます。
そういう時は、独りで抱え込まないでください。心の底にあるテーマは、本人にとって「当たり前すぎる」ぶん、一度言葉にすると、その重さが急に意識されることがあります。誰かと一緒に整理する時間があると、回り道のようでいて、最も近道になることがあります。
理論編のシチュエーションは鏡|布置・コンステレーションを医師が解説では、なぜ同じ場面が繰り返されるのかを、医学的・心理学的に解説しています。
体験編のまた同じ場面に立っている、と気づく瞬間では、気づきの瞬間の感覚を扱っています。
似たテーマの実践として、未完了課題を扱う3つの問い|スラトレ®内省ワーク、苦しみを気づきに変える3つの問い|スラトレ®哲学ワーク、そしてシリーズ核心:待つ筋力を育てる最終実践|やえこふクリニックの選択肢も、あわせて読んでみてください。
🩺 専門家と一緒に整理したい方へ
この3つの問いを書いてみても、なかなか言葉にならない方、出てきたテーマが重く感じられる方は、独りで抱え込まずに、専門家と一緒に整理する選択肢があります。
やえこふクリニックでは、経営者・医師・リーダー層向けに、心の奥にあるテーマと向き合うパフォーマンストレーニングをご案内しています。Dr.EKO博士(医師・医学博士)が直接対応します。
まとめ
- 似た場面の繰り返しに気づいたら、その場面を「自分への問いかけ」として読み解く作業に進む
- 現実の読み解き(Reading Reality) は、目の前の状況を、自分への問いかけとして読み取る作業
- 鍛え方は、感情を書く → 過去の最古の場面を書く → してほしかったことを書く、の3つの問い
- 完璧にやろうとしない。週1回、3日続けば上等。難しい言葉でなく、子どものような素朴な言葉で書く
- 出てきたテーマが重い時は、独りで抱えこまず、専門家と一緒に整理する選択肢がある
監修:Dr.EKO博士(医師・医学博士・株式会社ヤエコフ代表)
免責事項: 本記事は、メンタル思考トレーニングおよびセルフケアに関する情報提供を目的とした内容です。医療行為・心理療法ではありません。重い症状が出ている方は必ず医療機関を受診してください。スラトレ®は、医師が開発したメンタル思考トレーニングです。
最終更新:2026年5月