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未完了課題を扱う3つの問い|スラトレ®内省ワーク

心の中に残っている「終わっていない仕事」を、自分の中で扱うための3つの問い。本記事では、医師が、未完了課題を整理していく具体的な手順を紹介します。

Q1. なぜ「同定」が必要なのか

未完了課題があることに気づいても、それだけでは、現実は変わりません。

たとえば、机の隅に何枚も書類が積まれている状態を想像してみてください。「この山には、未処理の書類がある」と気づくのは、最初の一歩です。けれど、その先には、もっと大切な作業があります。

それは、「どの書類が、どんな仕事として残っているのか」を、一枚ずつ見ていくことです。

書類の山を、ただ「ある」と認識しているだけでは、片付きません。一番上の書類を取り出して、何が書かれているかを読む。これは判子だけで終わるのか、それとももう一度誰かに相談すべき仕事なのかを判断する。── そういう、一枚ずつの作業が必要です。

心の中の未完了課題も、同じです。「自分の中に未処理のものがある」と気づいた後、その「もの」が具体的に何なのか、を取り出して見ていく作業がいります。

ここで多くの方は、こう感じます。「自分の中の未完了課題が、具体的に何か、と言われても、わからない」。

それは正常です。

未完了課題は、本人にとっては「あまりに長く一緒にいすぎたもの」です。空気のように、感じている自覚すら薄くなっています。だから、見えないまま放置すると、いつまでも見えません。けれど、ある手順で「問い」を立てていくと、輪郭が少しずつ見えてきます。

本記事では、その手順を3つの問いとして紹介します。ノート1冊と、20〜30分の時間があれば始められます。

Q2. 課題の同定とは何か

問いに入る前に、ここで一つ用語を整理しておきます。

未完了課題と向き合う作業には、大きく2つの段階があります。

1つ目は「気づく」段階。「自分の中に、何か未処理のものがあるらしい」という、ぼんやりした自覚です。

2つ目は「同定する」段階。「未処理のものは、具体的にこういうテーマだ」と、輪郭をつかむ作業です。

「同定」というのは、たくさんあるものの中から、それが何かを特定する、という意味です。たとえば、医療現場では、症状を見て「これは○○という状態」と特定することを「同定する」と言います。心の中で起きていることに対しても、同じ言葉が使われます。

では、なぜ「気づく」だけでなく「同定する」が必要なのでしょうか。

たとえば、家のあちこちで雨漏りがしている、と気づいたとします。気づいただけでは、修理は始まりません。「どの部屋の、どの天井の、どのあたりから漏れているか」を特定しないと、屋根のどこを直せばいいかが決まらないからです。

未完了課題も、同じです。「自分の中に未処理のものがある」だけでは、何に向き合えばいいかが決まりません。未処理のものを、できるだけ具体的な「テーマ」として取り出す ── これが、同定の作業です。

この作業を、心理学では次のように呼びます。

【課題の同定】(かだいのどうてい / Issue Identification)とは、繰り返し現れる出来事の奥にある、本当のテーマを見つける作業のことです。

「同定」は、ただ漠然と感じるのではなく、「これだ」と指で差せるところまで明確にする、という意味です。漠然とした不快感を、「これは『認められたかった気持ち』が残っているんだ」と、具体的な名前で呼べるところまで持っていく。それが、この作業のゴールです。

ただし、この作業は、急いではいけません。一度のセッションで全部を出そうとすると、心が反発します。1つの問いに、何日かかけて向き合うほうが、結果として深く届きます。

Q3. 今日からできる、3つの問い

ノートを1冊用意してください。スマホのメモでも構いません。

そして、最近「またこの感じだ」と感じた繰り返しの出来事を1つ、思い浮かべてください。それは、人間関係の場面でも、仕事の場面でも、家族との場面でも構いません。

その出来事について、以下の3つの問いを順番に書いていきます。

問い1:この出来事で、最も強く動いた感情は何だったか。そして、その感情は、過去のいつ、初めて味わったか

(目的:今の感情を、過去の感情とつなげる)

書き方の例:

  • 動いた感情:見捨てられた感じ / 強さ8/10
  • 体のどこに来たか:胸の真ん中、喉が締まる感じ
  • 過去に同じ感情を初めて味わった場面:小学校の運動会で、家族が誰も見に来なかった時

ここで大事なのは、「過去のはるか昔」まで遡らなくていい、ということです。最初は、ここ数年の中で、似た感情を味わった場面で十分です。続けていくうちに、もっと古い場面が浮かんできたら、そちらを書き直してください。

問い2:あの場面で、自分は本当は何をしてほしかったのか。何を伝えたかったのか

(目的:未完了の「中身」を取り出す)

書き方の例:

  • してほしかったこと:「忙しくても、一回でいいから来てほしかった」
  • 伝えたかったこと:「私はちゃんとここにいる、見てほしい」

ここでのコツは、難しい言葉を使わないことです。子どもがそのまま口に出すような、素朴な言葉で書いてください。「自己肯定感が」「承認欲求が」── そういう知的な整理は、ここでは要りません。「見てほしかった」「分かってほしかった」「謝ってほしかった」── そのレベルの言葉が、最も真実に近い言葉です。

問い3:今の自分が、あの時の自分に、何と声をかけられるか

(目的:未完了を、自分の中で完了に近づける)

書き方の例:

  • 「あの時、誰も来てくれなかったね。寂しかったね」
  • 「ちゃんと頑張っていたのに、誰にも見てもらえなくて、悔しかったよね」
  • 「今は、私が見てる。気づくのが遅くてごめん」

ここで多くの方は、書きながら涙が出ます。それで構いません。涙は、心の中で何かが動いた証拠です。

ある経営者の方は、この3つの問いをやってみて、こう書きました。

「あの時の自分は、ずっと、ちゃんと見てもらいたかっただけだった。それを、誰にも言えないまま、今までずっと走ってきた」。

この一文が出てきてから、その方は、職場で部下が自分を「見ていない」と感じる場面で、以前ほど強い反応が出なくなったそうです。なぜなら、「見てほしい」という未完了の気持ちが、本人の中で言葉になり、本人の中で受け止められたからです。

これが、未完了課題を「自分の中で完了に近づける」ということの意味です。過去の相手に向かってもう一度何かを言うのではなく、過去の自分に向かって、今の自分が応答する。それで、心の机の隅にあった書類は、少しずつ整理されていきます。

ただし、この問い3で、強い感情が出てくる方もいます。書きながら、当時の悲しみや怒りが、今、目の前にあるかのように立ち上がってくる。そういう時は、書くのを一度止めて、深呼吸してください。お茶を飲んで、一晩おいてから続きを書く ── そのくらいのペースで構いません。

Q4. 実践を続けるコツ

この3つの問いは、一度で終わるものではありません。

書いてみて、何も浮かばない日もあります。書いている途中で、別のもっと古い場面が浮かんでくる日もあります。書いた後、しばらくは何も変わらないように見える日が続くこともあります。

すべて、よくあることです。

完璧にやろうとしないでください。週に1回、ノートを開くだけで、十分です。3日続けば上出来です。1つの未完了課題に、半年かけて向き合っても、それは遅すぎる、ということはありません。

そして、もう一つ大切なことがあります。

未完了課題は、独りで掘り下げると、思っていたより深いところまで降りていくことがあります。書いて出てきた感情が、想像以上に重たい。書いた後、しばらく日常が手につかないほど、揺れる方もいます。

これは、悪いことではありません。長く心の中に置かれていたものが、表に出てきている自然な反応です。けれど、独りで耐え続ける必要はありません。

特に、書いていて「これは独りでは扱いきれない」と感じた場合や、出てきたテーマが幼少期の重い体験につながっている場合は、専門家と一緒に進めることをおすすめします。回り道のようでいて、それが最も近道になることがあります。

理論編の未完了課題 unfinished businessとは|医師が解説する繰り返しの正体では、なぜ過去の課題が現実に持ち越されるのかを解説しています。
体験編の似た人と似た展開で出会い直す感覚では、未完了課題が人間関係の中でどう現れるかを描いています。

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まとめ

  • 未完了課題は「気づく」だけでなく、「同定する(具体的なテーマとして取り出す)」ところまで進める必要がある
  • 課題の同定(Issue Identification) は、繰り返し現れる出来事の奥にある、本当のテーマを見つける作業
  • 鍛え方は、感情と最古の場面をつなぐ → 本当はしてほしかったことを書く → 今の自分から声をかける、の3つの問い
  • 過去の相手にやり直すのではなく、過去の自分に今の自分が応答する。これで心の机の隅の書類が整理されていく
  • 出てきたテーマが重い場合や、幼少期の体験につながる場合は、専門家と一緒に進めることをおすすめします

監修:Dr.EKO博士(医師・医学博士・株式会社ヤエコフ代表)

免責事項: 本記事は、メンタル思考トレーニングおよびセルフケアに関する情報提供を目的とした内容です。医療行為・心理療法ではありません。重い症状が出ている方は必ず医療機関を受診してください。スラトレ®は、医師が開発したメンタル思考トレーニングです。

最終更新:2026年5月

Dr.EKO博士
Dr.EKO博士(YAEKOFU)
医師・医学博士。スタンフォード大学でEIを学び、スラトレ®(メンタル思考トレーニング)を創始。エグゼクティブ・医師・リーダーの心身パフォーマンス向上を支援しています。