概要:最高に楽しい夜の終わりに訪れた、指先を突き抜ける衝撃。整形外科医であり、かつて手の外科を専攻していた私が「患者」になったとき、選んだのは救急受診ではなく、自宅での「メガネフレーム」による応急処置でした。1ミリのズレも許さない深夜の攻防と、自ら骨を整復する痛み。そこから見えてきた、心と人生の整え方の真髄をお伝えします。
始まりの夜
12月末の凍えるような夜、久々の休日のことでした。少し遠出をして夕食を終えた、最高に楽しい夜でした。
以前から時々訪れていた屋外のパブリックなバスケットボールコートに立ち寄り、「ただの遊びだから」と準備体操もなしにシュートを打ち始めた数分後、私の指に人生初めての衝撃が襲いました。
整形外科医が「患者」になった瞬間
左指を突き指した直後、帰りの車中で指はみるみる腫れ上がり、拍動するような痛みが襲ってきました。
隣ではパートナーがルンルンで運転しています。楽しい雰囲気を壊したくなくて言い出せない私。
しかし、あまりの異変に「これは、骨にいっているな」と確信しました。整形外科医としての経験ではなく、一人の人間としての直感がそう告げたのです。
これまで多くの患者さんの治療にあたってきましたが、医師は治療はできても、患者さんの痛みをそのまま体験することはできません。
顔は青ざめ、全身の血の毛が引いていくのを感じながら、私は骨折というものの本当の痛さを思い知りました。
一変して、壮絶な夜に
受傷したのは土曜日の夜7時。
地方の街はすでに真っ暗で、大きな救急病院は命に関わる「本物の症例」が次々と運ばれる戦場と化していることは容易に想像できました。
小指の怪我くらいでそこへ行くわけにはいかない――。それは、医療者としてのプライドでした。
頼れるのは目の前のパートナーしかいません。楽しい雰囲気から一変し、家庭も戦場に変わりました。
「マレット骨折」という難敵と小指の重要性
私が突き指の瞬間に疑ったのは「マレット骨折」。
これは整形外科医の腕一つで治療成績が大きく分かれる怪我です。放置したり処置を誤れば、指先が一生曲がったままになる後遺症が残ります。
「小指くらい」と侮るなかれ。
ゴルフやテニス、あらゆる「握る」動作において、実は小指こそがグリップの主役なのです。繊細な動作のバランスを支えるにもこの小さな指を使っています。
かつてバリバリの外科医だった時代、私は手の外科を専攻していました。手の外科医の端くれとして、どうしても守り抜かなければなりませんでした。
深夜の応急処置:メガネフレームの変身
自宅にあるもので指を固定しなければならない。
そこで見つけたのは、3年間放置されていた壊れたメガネのフレームでした。形状記憶の性質を持つこの素材は、最高のギプス代わりになります。
- 適切な長さにフレームをカット
- 専門医の視点で「整復ポジション」をミリ単位で調整
- パートナーへの容赦ない「1ミリのズレ」への指導
もし骨片(こっぺん)が飛んでいたら、今しか戻せるタイミングはない。
反対の手で骨をぐいっと押し込む「徒手整復」を麻酔なしで行うのは壮絶な痛みでしたが、後悔したくない一心でやり遂げました。
「違う、1ミリずれてる!」「ちょっと曲がってる!」。
深夜の自宅で繰り広げられた専門医と固定装具を作る非医療者の真剣勝負。
納得のいく固定が完成したとき、喜びと共に、そこには確かな安心感がありました。
知っていることが「安心」という薬になる
なぜ私たちがパニックにならずに済んだのか。
それは、今、体で何が起きていて、どう処置すべきかという「正解」を知っていたからです。
見通しが立っているだけで、恐怖は制御可能なものに変わります。
今回改めて、「知らない」(Unknown)という最大の恐怖を思い知らされたからこそ、この記事を綴っています。
「知らない」という最大の恐怖
なぜこれほどまでに怖いのか。
それは、多くの人にとって骨折や不調が「わけのわからない未知の事態」だからです。しかし、私には知識がありました。
- 今、指の中で何が起きているのか――骨が欠け、骨髄から出血しているからパンパンに腫れてくるのだ。
- 明日のレントゲンまで、今日は何をしておけばいいのか。
- これからどのような経過をたどるのか。どんな注意点があるのか。
- もしオペになったら絶対手の外科の専門医の先生に。✅ 見つけておく。
その夜、私は痛みで2時間おきに目を覚ましました。
- その度に枕元の小さな電球をつけ、指の状態を確認しました。
- 指先を軽く触って血流は保たれているか?
- 整復ポジションはズレていないか?
- 装具と指を固定するテープがきつすぎないか?時々緩めたりしました。
知識に裏打ちされたチェック項目をすべて確認するたび、深い安心とともに再び眠りにつくことができました。
心の不調も、人生の不調も、メカニズムは同じ
多くの人が人生で困難に直面したとき、怖くてたまらないのは「何が起きているかわからない」からです。
正体がわからず出口が見えないと、「一生このままなのかもしれない」という不安に飲み込まれてしまいます。
しかし、本来「メカニズム」を知れば、どんな不調も怖くないものに変わり、恐怖は安心へと変わります。
自分の感情や思考のクセを的確に言語化し、その扱い方(処置)を知る。
それだけで、あなたは人生の主導権(舵)を取り戻せるのです。
あなたも「人生の救急箱」を手に入れませんか?
スラトレ®(スライブトレーニング®)は、医学と心理学の知見から生まれた、自分で自分を助けるための技術です。
今回の私の骨折のように、「手術しなくていいのか、手術が必要なのか?」「応急処置と、根本治療の違いは?」
職場や家庭の人間関係や人生の不調が起きたとき、そういった適切な判断がつくよう独自に開発されたノート術です。
各種ノートには、決められたルールがあります。そのルールに則って書き込んでいくだけで、自然にあなたの心のメカニズムが紐解かれていく構造になっています。
私はこのメソッドを体系化し、実践経験豊富な認定トレーナーたちに継承してきました。
彼ら/彼女らは、このノート術を深く学び、多くの方々の人生の転機に寄り添ってきたプロフェッショナルです。
あなたの心の状態を丁寧に見極め、一人ひとりに最適なサポートを提供します。創始者である私の知見と経験が、認定トレーナーを通じてあなたのもとへ届きます。
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