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自覚的に選び直す3つのステップ|スラトレ®実践ノート

過去の選択に違和感を抱えながら、けれど人生をやり直すには遅すぎる気がする ── そう感じている方に向けて、スラトレ®(メンタル思考トレーニング)の核心である「自覚的選択」を日常で扱える3つのステップをお伝えします。「選び直す」は、人生をやり直すことではなく、過去の選択を自分の重さで持ち直す作業です。

Q1. なぜ「選び直す」のに3つのステップが要るのか

「これからは自覚的に選ぼう」と頭で決めるだけでは、なかなか日常は変わりません。

頭で決めた瞬間は、変わった気がします。けれど次の日の朝、いつもの流れに戻ると、また同じように選ばされている自分がそこにいます。なぜでしょうか。

人の心の中には、長年積み上げてきた「選び方の癖」があります。これまで何千、何万回と繰り返してきた、頭の声だけで決める癖。期待に応える癖。安全な方を選ぶ癖。これらの癖は、本人が「変えよう」と思った瞬間に消えるほど、軽いものではありません。

癖を変えるには、癖の上書きが要ります。新しい選び方を、何度も繰り返して、身体に覚えさせる作業です。

そのために、3つのステップを順番に踏みます。最初のステップで、選び方の現在地を確認する。次のステップで、新しい選び方の練習をする。最後のステップで、選び直しを生活に組み込む。この順番が大事です。

スラトレ®では、この順番を「身体に覚えさせる」と表現します。頭で分かっただけでは身体は動きません。身体が動くようになって、初めて選び方が変わります。

Q2. 自覚的に選び直すという考え方

実践に入る前に、ひとつだけ言葉を共有させてください。

これから紹介する3つのステップは、すべて「過去の選択を、自分の重さで持ち直す」ためのものです。

ここで一つ、日常の場面を借ります。

川を下る小舟を思い浮かべてください。舟には、オールがあります。けれど、ずっとオールを握らずに過ごしていると、舟は流されるままに進みます。岸の景色は変わっていく。けれど、自分が漕いだのではなく、川に運ばれているだけです。ある日ふと「自分の舟なのに、自分で漕いでいない」と気づく瞬間があります。

ここで、舟を陸に上げて新しい舟に乗り換える必要は、ありません。今の舟のまま、オールを握り直すだけで、十分です。同じ川を下っていても、流されているのと、自分で漕いでいるのとでは、手応えが違ってきます。

これから紹介する3つのステップは、舟を乗り換えるためのものではなく、握っていなかったオールを、もう一度握り直すための手順です。

人生をやり直すことではありません。今の仕事を辞める、結婚をやり直す、住む場所を変える ── そうした大きな変化のことではありません。今の場所、今の関係、今の役割をそのまま続けながら、その続け方を「流される続け方」から「自分で選んで続ける続け方」に変える作業です。

外から見ると、何も変わりません。同じ仕事を続けている、同じ家族と暮らしている、同じ場所に住んでいる。けれど、内側から見ると、別の状態です。同じ続けるでも、選び直して続けているのと、流されて続けているのとは、心の手応えがまったく違います。

ここで、一つの言葉を出します。

【選択の再構成】(せんたくのさいこうせい / Reframing of Choice)とは、過去の選択を、現在の自分の視点から、もう一度言葉にし直す作業のことです。

過去は変えられません。けれど、過去の選択を語り直すことはできます。「あの時、私は仕方なくこの仕事を始めた」を、「あの時、私はこういう理由でこの仕事を選んだ」に語り直す。この語り直しが、選び直しの本質です。

これから紹介する3つのステップは、すべてこの選択の再構成のためのものです。

Q3. 今日からできる3つのステップ

ステップ1:現在地を書き出す

紙とペンを用意してください。デジタルメモでも構いません。

今の自分の人生を構成している主要な選択を、5つから10個ほど書き出します。仕事、住む場所、パートナー、家族との関係、付き合っている人たち、お金の使い方、時間の使い方、休み方、趣味。何でも構いません。

書き出したそれぞれの項目について、こう問います。

> 「これは、今の私が、もう一度同じ選択をするか?」

答えを、項目の隣に書きます。「する」「しない」「分からない」のいずれかで。

これだけです。5分から10分で終わる作業です。

ここで大事なのは、答えに正直であることです。「するべき」「しなくてはいけない」ではなく、「今の自分の本心では、どうか」を聞きます。

書き終えたら、3つの項目に分かれているはずです。「今でも選ぶもの」「今なら選ばないもの」「分からないもの」。この3つの項目が、選び直しの出発点です。

ステップ2:「選ぶ」項目を、選び直す

「今でも選ぶ」と書いた項目から、まず始めます。意外に思われるかもしれません。「選ばない」と書いた項目から始めるべき気がするかもしれません。けれど、最初に手を付けるのは、「選ぶ」と書いた項目です。

なぜか。「選ぶ」と書いた項目を、もう一度、自分の重さで「選ぶ」と言い直す ── この作業が、選び直しの基礎体力を作るからです。

「選ぶ」と書いた項目を一つ取り出して、こう自分に言います。

> 「私は、いまもう一度、これを選ぶ」

声に出して言ってください。心の中で言うだけより、声に出した方が、腹に落ちます。

たとえば、今の仕事を「選ぶ」と書いたなら、「私は、いまもう一度、この仕事を選ぶ」と声に出す。今のパートナーを「選ぶ」と書いたなら、「私は、いまもう一度、この人と一緒にいることを選ぶ」と声に出す。

ある経営者の方は、こう話されました。「今の事業を『選ぶ』と書いて、声に出してみたら、急に涙が出てきた。30年やってきた事業を、初めて自分の意志で『選ぶ』と言えた気がした」と。これは決して珍しい変化ではなく、面談の場では同じような声を、何度もうかがってきました。※個人の感想であり、効果を保証するものではありません。

「選ぶ」と書いたものを、改めて「選ぶ」と言い直す。これだけで、過去の流された選択が、自覚的選択に変わることがあります。

ステップ3:「分からない」項目を、保留したまま持つ

「分からない」と書いた項目があるはずです。これらは、すぐに結論を出さなくて構いません。

「分からない」を「分からない」のまま、持ち続けることが大事です。

人は、「分からない」が苦手です。「分からない」を抱えていると、心が落ち着きません。だから、無理に答えを出して、自分を納得させようとします。けれど、無理に出した答えは、また流された選択になります。

「分からない」と書いた項目について、こう自分に言ってあげてください。

> 「これは、今は分からない。分からないまま、3ヶ月持つ」

期間は1ヶ月でも、半年でも構いません。期間を決めて、「分からない」を抱えると決める。この決めること自体が、自覚的選択の練習になります。

3ヶ月後、もう一度問い直してください。「これは、今の私が、もう一度同じ選択をするか?」と。3ヶ月持っていた間に、答えが少し動いていることがあります。動いていなくても構いません。動かなかった、ということ自体が、一つの答えです。

これが、3つのステップです。現在地を書き出す、選ぶ項目を選び直す、分からない項目を持ち続ける。それぞれ、5分から10分で始められる作業です。

Q4. 続けるためのコツ

「選ばない」項目に、すぐ手を付けない

ステップ1で「今なら選ばない」と書いた項目があるはずです。仕事、関係、住む場所など、「もう一度なら選ばない」と感じるもの。

この項目には、すぐに手を付けないのがコツです。「選ばない」と気づいた瞬間、すぐに辞める、別れる、引っ越す、といった大きな行動を取りたくなる方がいらっしゃいますが、勧められません。気づいた直後の決断は、振り子の反対側に振れすぎることがあります。

「選ばない」と書いた項目は、しばらく抱えてください。半年、1年と抱えているうちに、本当に選ばないのか、それとも一時的な違和感なのか、輪郭が見えてきます。輪郭が見えてから動いても、遅くはありません。

月に1回、書き直してみる

ステップ1の書き出しは、月に1回くらい繰り返してみてください。

不思議なことに、同じ項目について、月によって答えが変わります。先月は「選ぶ」と書いたものが、今月は「分からない」になっていたり。先月は「選ばない」と書いたものが、今月は「選ぶ」に戻っていたり。

この変動自体が、自分の心の動きを映しています。動きを観察していくうちに、自分が何に揺れているのか、何に揺れていないのかが、見えてきます。

独りで進めるのが重い時は

ステップ1で書き出すこと自体が、苦しい方もいらっしゃると思います。「選ぶ」と書いていいのか、「選ばない」と書いていいのか、自分の本音が分からなくて止まってしまう。

これは、努力が足りないからではありません。長年、自分の本音を奥にしまってきた人は、本音を取り出すこと自体に、誰かのサポートが要ることがあります。誰かに、自分の選択を一つひとつ言葉にしてもらいながら整理していく方が、はるかに早いことがあります。

スラトレ®(メンタル思考トレーニング)の場では、こうした選び直しを一緒に丁寧に扱っていきます。流された選択を、自覚的選択へと持ち直すための場として活用していただけます。


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やえこふクリニックでは、経営者・医師・リーダーの方向けに、Dr.EKO博士(医師・医学博士)が直接対応する個別面談をお受けしています。流れに乗ってきた選択を、自分の重さで選び直したい方のための場です。

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シリーズ内には、理論編「自覚的選択 Conscious Choiceとは|スラトレ®で学ぶ動かない強さ」と体験編「自分で選んだはずの仕事に、なぜ違和感があるのか」もあわせてご用意しています。シリーズ起点の「動けない vs 動かないの違い|医師が解説する2つの停止状態」、関連実践として「隠された利得を見つける3つの問い|スラトレ®自己観察ワーク」、シリーズ核心「シリーズ核心:待つは、最高難度のスキル|医師が解説するリーダー最後の筋肉」もご用意しています。


まとめ

  • 選び直しは、人生をやり直すことではない。今を選び直すこと
  • 3つのステップ:現在地を書き出す、選ぶ項目を選び直す、分からないを持ち続ける
  • 「選ばない」項目には、すぐに手を付けない
  • 月に1回、書き直すと、自分の心の動きが見えてくる
  • 独りで重い時は、スラトレ®で一緒に整理する選択肢があります

監修:Dr.EKO博士(医師・医学博士・株式会社ヤエコフ代表)

免責事項: 本記事は、メンタル思考トレーニングおよびセルフケアに関する情報提供を目的とした内容です。医療行為・心理療法ではありません。重い症状が出ている方は必ず医療機関を受診してください。

最終更新:2026年5月

Dr.EKO博士
Dr.EKO博士(YAEKOFU)
医師・医学博士。スタンフォード大学でEIを学び、スラトレ®(メンタル思考トレーニング)を創始。エグゼクティブ・医師・リーダーの心身パフォーマンス向上を支援しています。