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同じパターンの再現性|医師が解説する繰り返す人生の構造

「気づくと、また同じことをしている」── 別の場所で、別の相手と、別のタイミングで、なぜか毎回同じ役を演じてしまう。本記事では、医師の視点から、この繰り返しの構造を医学的に解説します。

Q1. なぜ、人は同じパターンを繰り返してしまうのか

ある経営者の方が、こんな話をしてくれました。

「自分は、関係が深まりかけると、毎回、自分のほうから距離を取ってしまうんです。仕事のパートナー、友人、家族 ── 相手や場面は違うのに、自分の動き方だけは、いつも同じ。最初は熱心に近づいて、いいところまでいって、ある一線を越えそうになると、無意識に冷たくなる。これに気づいたのは、もう何度目かの関係を自分から終わらせた後でした」

別の医師の方は、こう話してくれました。

「私はいつも、同じタイミングで仕事を辞めてしまいます。3年目あたりで、なぜか限界を感じて、次に移る。これまで4回、ほぼ同じ年月で職場を変えてきました。最近、5年目の今の職場でも、同じ感覚が出てきていることに気づいて、立ち止まりました。場所が違うのに、辞めたくなる時期だけが、毎回正確に揃っている」

なぜ、こんなことが起きるのでしょうか。

普通に考えれば、これは「相性の問題」「タイミングの問題」「環境の問題」と片付けたくなります。けれど、3回、4回と数を重ねるごとに、本人の中にある違和感が育ってきます。「相手も場所も毎回違うのに、なぜ私の動き方だけが同じなのか」。

ここで先回りして言っておきます。あなたは正常です。

同じパターンを繰り返すのは、学習能力が低いからでも、性格に欠陥があるからでも、人として未熟だからでもありません。これは、人間の心の中で、ごく自然に起きる現象です。むしろ、繰り返しに「気づける」ということ自体が、繊細な観察力の証拠です。多くの人は、繰り返していることにすら気づかず、毎回「相手のせい」「環境のせい」で済ませて通り過ぎていきます。

そして、気づいた時の苦しさは、本物です。「自分は何年経っても、同じ場所をぐるぐる回っているだけかもしれない」── そう感じる夜は、つらいものです。けれど、その苦しさの裏側には、ある構造が隠れています。

Q2. 反復強迫とは何か

ここで、心の中で起きていることを、日常の言葉で描いてみます。

レコードのプレーヤーを思い浮かべてください。古い世代の方なら、実物を見たことがあるかもしれません。

レコードの上には、針が走っています。針は、レコードに刻まれた溝に沿って動いていきます。普通は、外側から内側へと、らせん状に進んでいきます。

ところが、レコードに深い傷がついていると、針が同じ場所で何度もループしてしまうことがあります。同じフレーズが、何度も何度も繰り返される。針は、その傷を乗り越えられないまま、同じ溝を回り続けます。

人の心の中にも、これと似たことが起きています。

子どもの頃や、人生のある時期に、深く刻まれた感情の体験があります。たとえば「自分は本当に大事にされているのだろうか」「いつか、また裏切られるのではないか」「自分は深く関わると傷つく」── そういう、心の中に深く刻まれた問い。

普通の心の動きは、出来事ごとにいろんな反応を示します。けれど、その「深く刻まれた問い」に近づく出来事が来ると、心の針は、その溝にハマって、同じ反応をループし始めます。

外から見ると、「相手が違うのに、毎回同じ反応をしている」ように見える。本人にとっては、別に同じ反応をしているつもりはないのに、なぜか同じ場所に戻ってしまう。これは、レコードの針が傷の溝にハマっているのと、構造として似ています。

ここで一つ大事なことがあります。

針が傷の溝にハマる時、それは、針を責めても解決しません。針は、傷の上を通ったから、ハマっただけです。問題なのは、レコード側の傷であって、針の動きを意志の力で変えようとしても、根本は変わりません。

人の心も同じです。同じパターンを繰り返している時、本人の意志や努力で動き方を変えようとしても、深い溝の上を通る限り、また同じ場所にハマります。「次は気をつけよう」と決意しても、似た場面で同じ反応が出てしまうのは、意志が弱いからではなく、心の中に深い溝があるからです。

この、心の中の深い溝が、似た場面で同じ反応を引き出す現象を、心理学・精神医学では次のように呼びます。

【反復強迫】(はんぷくきょうはく / Repetition Compulsion)とは、解決していない心のテーマが、似た形の出来事で繰り返し現れる傾向のことです。

「反復」は、繰り返すこと。「強迫」は、自分の意志ではどうにもできない感じで、強く駆り立てられること。あわせて「反復強迫」と呼びます。「自分の意志で繰り返しているのではなく、何かに繰り返させられている」── そういう感覚を持つ現象です。

この概念は、もともとフロイト(Freud, 1920)が記述したものですが、その後の精神医学・臨床心理学の中で広く扱われるようになり、現在では人格障害・対人関係療法・トラウマ研究など、さまざまな領域で重要なテーマとして研究されています(Kernberg, 1992; van der Kolk, 1989 ほか)。

Q3. 反復強迫の構造と、よくある誤解

この考え方には、誤解されやすい点がいくつかあります。

誤解1:「気合いと意志で抜け出せる」

「同じパターンを繰り返してしまうのは、自分の意志が弱いからだ。次は気をつけよう」── そう感じる方が多いです。これは、半分しか合っていません。

意志は大事です。けれど、反復強迫の本体は、意志の届かないところにあります。心の中に深く刻まれた溝の上を針が通る限り、意志の力で「ハマらないようにしよう」と思っても、ハマる時はハマります。

大事なのは、「意志で抜け出そう」とする方向ではなく、「なぜこの溝が刻まれたのか」を一緒に見ていく方向です。これは、意志の力ではなく、観察と理解の力で進む作業です。

誤解2:「消す」「なくす」ものではない

「では、これは病気のように何かをして消せば、なくなるのか」── これも違います。

反復強迫は、症状として消すべきものではありません。むしろ、「同じテーマを取り組み直す機会」を、人生が用意し続けてくれている、と読むこともできます。1回目では取り組みきれなかったテーマが、別の形で2回目に来る。2回目で気づけなかった部分が、3回目で見えてくる ── そういう、らせん階段のような取り組み方です。

完全に消すことを目指すと、無理が出ます。「以前ほど深くハマらなくなる」「ハマっても、抜け出すのが速くなる」── そういう変化を目指す方が、現実的です。

誤解3:「自分の中だけで起きている」のではない

反復強迫は、自分の中だけで起きるものではありません。多くの場合、相手側にも、その人なりの溝があり、二人の溝が引き合うようにして、特定のパターンが成立します。

これは「相手のせい」という話ではなく、「同じパターンの再現には、相手側の構造も関わっている」という事実です。だから、相手を変えようとするより、自分の側の溝を見ていく方が、結果として両方の関係性が変わっていきます。

精神医学の対人関係療法・愛着の臨床研究などでは、この「二人の構造の相互作用」が、繰り返しを成立させる要因として広く議論されています(Mikulincer & Shaver, 2007 ほか)。

Q4. 反復強迫を知ることで、何が変わるか

この考え方を一つ持っておくと、繰り返しへの向き合い方に、いくつかの変化が起こりえます。

まず、「また同じことをやってしまった」と気づいた時に、自分を強く責める頻度が減ります。「私は意志が弱い」ではなく、「あ、また心の中の深い溝の上を通ったんだな」と、一段引いて見られるようになります。これだけで、消耗の量が変わります。

次に、繰り返しの中身に対する見方が変わります。同じパートナータイプとの繰り返し、同じ職場パターンの繰り返し、同じ家族との関わり方の繰り返し ── これらを、「自分の人格的欠陥」ではなく、「心の中で取り組み直しを求めているテーマ」として読めるようになります。

そして、変化の速度に対する期待値が変わります。「一発で完全に変わる」ことを目指すのではなく、「以前より少しだけハマる時間が短くなった」「以前より早く気づけるようになった」── こういう小さな変化を、変化として認められるようになります。実際、こういう小さな変化の積み重ねが、長い時間をかけて、人生の流れを大きく変えていきます。

ただし、自分の中の「深い溝」を独りで見ようとすると、限界があります。なぜなら、その溝は、本人にとって「当たり前すぎる場所」になっていて、外側からの視点なしには輪郭がつかみにくいからです。誰かと一緒に、その溝を見ていく時間を持つことが、結果として、最も近道になることがあります。

具体的にどんな体験として現れるのかは、体験編の気づいたら、また同じ役を演じている自分で描いています。実際にパターンを変えていくワークについては、実践編の再現パターンを変える3つの問い|スラトレ®再設計ワークで具体的な手順を紹介しています。

また、今回扱った「繰り返し」というテーマは、シチュエーションは鏡|布置・コンステレーションを医師が解説未完了課題 unfinished businessとは|医師が解説する繰り返しの正体、そしてシリーズ核心:待つは、最高難度のスキル|医師が解説するリーダー最後の筋肉とも深くつながっています。あわせて読むと、見え方が立体的になります。


まとめ

  • 同じパターンの繰り返しは、意志の弱さではなく、心の中の深い溝が引き起こしている
  • 反復強迫とは、解決していない心のテーマが、似た形の出来事で繰り返し現れる傾向のこと
  • 治すものではなく、らせん階段のように取り組み直すもの
  • 自分の中だけでなく、相手側の構造とも関わって成立している
  • 知ることで、自分を責める頻度が減り、繰り返しを別の意味で読めるようになる

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監修:Dr.EKO博士(医師・医学博士・株式会社ヤエコフ代表)

免責事項: 本記事は、メンタル思考トレーニングおよびセルフケアに関する情報提供を目的とした内容です。医療行為・心理療法ではありません。重い症状が出ている方は必ず医療機関を受診してください。スラトレ®は、医師が開発したメンタル思考トレーニングです。

最終更新:2026年5月

Dr.EKO博士
Dr.EKO博士(YAEKOFU)
医師・医学博士。スタンフォード大学でEIを学び、スラトレ®(メンタル思考トレーニング)を創始。エグゼクティブ・医師・リーダーの心身パフォーマンス向上を支援しています。