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待つ筋力を育てる3つの問い|スラトレ®未学習領域ワーク

「待つことは未学習領域だ」と分かったあと、ではどう練習すればいいのか ── その答えが、スキル獲得のステップという考え方にあります。本記事では、利き手と反対の手で文字を書き始めるような、最初の小さな練習を、今日から試せる3つの問いとしてお渡しします。スラトレ®の視点から、医師がまとめた未学習領域ワークです。

Q1. なぜ実践が必要か

理論編・体験編を読み終えたあと、こんな感覚が残っている方が多いと思います。

「待つことが未学習領域だと分かった。練習すればいいことも理解した。でも、明日の会議で、また同じ30秒が来た時、自分が何をすればいいのか、まだ分からない」と。

頭で分かっても、身体の動きはすぐには変わりません。これは、あなたの理解が浅いからではありません。

未学習領域の練習は、本を読むだけでは進みません。スポーツでも楽器でも、本を一冊読んで上手くなった、という方はいません。読むのとは別に、実際に身体を動かす手順が要ります。本に書いてあることが間違っているのではなく、未学習を学習に変えるには、本を読むのとは別の手順が要るというだけのことです。

必要なのは、知識ではなく、ほんの数分でできる小さな手順です。30秒が、いつのまにか1分、3分、5分と伸びていくための、最初の一歩の小ささ。それを、これからお渡しします。

Q2. スキル獲得のステップという技法

実践に入る前に、ひとつだけ言葉を共有させてください。

ここから紹介する3つの問いは、すべて「今日できる、ほんの小さな一歩」を見つけるためのものです。

スキルの習得というのは、ピアノの練習と少し似ています。

たとえば、あなたが今日からピアノを始めるとします。最初の日、いきなりベートーヴェンの曲は弾けません。最初の日にできるのは、右手で「ド」の音を、5回鳴らすだけです。次の日、「ド・レ」の2音。一週間後、「ドレミファソラシド」が弾けるようになる。一ヶ月後、両手で簡単な曲が弾けるようになる。

最初の日に弾いた「ド」の5音は、外から見れば、ほとんど何もしていないのと同じに見えます。けれど、その「ド」を5回鳴らした手は、一ヶ月後の手と、地続きでつながっています。最初の「ド」がなければ、一ヶ月後の曲はありません。

待つ練習も、これに似ています。最初の日、いきなり30分待てるようにはなりません。最初の日にできるのは、ほんの数秒、長く待つことです。次の日、もう少しだけ。一週間後、明らかに前より長く待てる瞬間が、たまに出てくる。

ポイントは、最初の一歩を、極端に小さく設定することです。「ド」を5回鳴らすぐらいの小ささ、と思っていただいて構いません。「30分待てるようになろう」と決めると、ほとんどの方が3日も経たずに止めます。「いつもより3秒長く待ってみよう」と決めると、続きます。続くから、伸びる。

これを、私は臨床の場で、ある一つの言葉で呼んでいます。

【スキル獲得のステップ】(すきるかくとくのすてっぷ / Skill Acquisition Steps)とは、未経験の動作を、小さな段階に分けて練習する手順のことです。

ポイントは「小さな段階に分けて」というところです。スキル獲得のステップは、根性や意志の強さで動かす道具ではありません。むしろ逆で、根性に頼らなくても続けられるくらい、最初の一歩を小さく刻むための道具です。

3つの問いは、それぞれ1分で答えられます。合わせて3分。最初は、これで十分です。

Q3. 今日から試せる3つの問い

問い1:「いつもの自分なら、何秒で動いていたか」

会議で、相手と話している時、自分の動きたい衝動が湧いた瞬間、その身体感覚に気づいたら、まずスマホでも紙でも構いません。一行だけ書いてください。

> 「いつもの自分なら、〇秒で動いていた」

たとえば、「いつもの自分なら、30秒で口を開いていた」「いつもの自分なら、5秒でメールに返信していた」「いつもの自分なら、3秒で答えを出していた」と。

なぜこの問いが要るのか。練習を始める前に、自分の出発点を知る必要があります。30秒なのか、5秒なのか、3秒なのか。これが分からないと、「いつもより少し長く」がどのくらいなのか、決められません。「ド」を弾く前に、自分の指がいま鍵盤のどこにあるかを、まず確認するのと同じです。

書く必要すらありません。心の中で「いつもの自分なら、〇秒だった」と一行つぶやくだけで十分です。これだけで、自分の出発点が一つ見えます。

問い2:「今日は、いつもより何秒長く待てるか」

出発点が見えたら、続けて自分に問いかけます。

> 「今日は、いつもより何秒長く待てるか」

ここで大事なのは、極端に小さい数字を選ぶことです。「30秒長く」ではありません。「3秒長く」です。

ある経営者の方は、面談でこう話されました。「最初に『30秒長く待てるようになろう』と決めて、3日で止まった。次に『3秒長くしよう』と決めて、それなら続けられた。半年経った頃、いつのまにか以前より20秒は長く待てるようになっていた」と。3秒の積み重ねが、半年後に20秒に化けた、ということです。これは決して珍しい変化ではなく、面談の場では似た経過を、何度もうかがってきました。

3秒という数字に、意味はあります。3秒は、誰にでも追加できる長さです。「30秒長く」と決めると、できなかった日に「自分はやっぱりだめだ」と落ち込みます。「3秒長く」なら、できなかった日があっても、翌日にもう一度3秒を足せばよいだけです。落ち込みません。落ち込まないから、続きます。

書く必要はありません。心の中で「今日は、3秒長く」と一行決めるだけで十分です。

問い3:「3秒のあいだ、自分は何をするか」

最後に、その3秒の中身を決めます。

> 「3秒のあいだ、自分は何をするか」

3秒という長さは、短いです。けれど、何もせずにじっとしていると、その3秒は永遠に感じられます。脳と身体は、空白を嫌うからです。空白を埋めるために、慣れた動きに勝手に戻ろうとする。

そこで、3秒のあいだに、ほんの小さな仕事を一つ与えます。たとえば、「3秒のあいだ、相手の目をもう一度見る」「3秒のあいだ、自分の呼吸を一度だけ感じる」「3秒のあいだ、机の上に置いた手の温度を確かめる」と。

仕事を一つ与えると、3秒は長く感じなくなります。逆に、「あれ、もう3秒経ったのか」と思える瞬間が出てきます。それが、待つ筋力の最初の手応えです。

書く必要はありません。「3秒のあいだ、〇〇する」と一行決めて、実際にやってみる。それだけで十分です。

これが、3つの問いです。1問1分、合わせて3分。最初の一歩としては、これで十分です。

Q4. 続けるためのコツ

完璧を目指さない

毎日完璧にこなそうとすると、ほとんどの方が3日も経たずに止めてしまいます。動きたい衝動が湧いた場面で、毎回スマホを取り出せるとは限りません。会議の最中、運転中、相手の前 ── 書けない場面の方が、むしろ多いかもしれません。

書けない時は、心の中で一行つぶやくだけで構いません。「3秒長く待ってみよう」と頭の中で決めるだけ。それだけでも、待つ筋力は、少しだけ動いています。

3日続けば、上等

新しい習慣は、3日続けば上等です。3日続いたあとに、3日休んでも構いません。また始めればよいだけです。「毎日続けなければ意味がない」という考え方が、続けることを一番難しくします。

気が向いた日に、思い出した日に、3秒の練習を当ててみる。それだけでも、半年経った頃に「以前ほど反射的に動かなくなった気がする」「会議の沈黙が、前ほど苦しくなくなった」と話される方が、面談の場では多くいらっしゃいました。※個人の感想であり、効果を保証するものではありません。

独りで抱え込まなくてよい

ここまで実践してみても、待つ筋力の手応えがつかめない、という方もいらっしゃると思います。それは、努力が足りないからではありません。何十年も「動く方の手」を磨いてきた方にとって、「もう片方の手」の最初の一歩は、独りで踏み出すには重く感じることがあります。

シリーズ内には、理論編「未学習領域への挑戦としての待つ|医師が解説する成長の止まり方(理論編)」と体験編「走り続けてきた自分が、初めて待つことになった日(体験編)」もあわせてご用意しています。並べて読んでいただくと、スキル獲得のステップという軸が、より立体的に見えてきます。

関連する実践として、希望と現実のあいだで揺れる時の練習を扱った「希望を持ち直す3つの問い|スラトレ®諦めと希望のワーク」もご用意しています。本記事の3つの問いと、地続きの内容です。

シリーズ核心の到達点として、待つ筋力そのものを総合的に育てる実践編「待つ筋力を育てる最終実践|やえこふクリニックの選択肢」もご用意しています。本記事の3つの問いを試したあと、ぜひ続けて読み進めてみてください。

それでも独りで進めるには重い、と感じる時は、専門家と一緒に整理する選択肢があります。


あなたの感情の波がどこで詰まっているか、知る手がかり

3秒の練習を試してみても、自分の中で何が動いているかが、まだ言葉になりにくい時があります。それは、心の中で波が、ある場所で詰まっているからです。

その手がかりとして、感情の3階層チェックリストを、ニュースレターにご登録いただいた方にお渡ししています。3秒のあいだに自分の中で起きていることを、一つひとつ言葉にする道具として、ぜひお手元に置いてみてください。

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やえこふクリニック パフォーマンストレーニングという選択肢

「動く方の手」と「待つ方の手」を、両方使えるようにしていく ── この練習を、独りで続けていくのは、何十年も「動く方の手」だけで結果を出してきた方ほど、難しいことがあります。

やえこふクリニックでは、経営者・医師・リーダーの方向けに、Dr.EKO博士(医師・医学博士)が直接対応する個別の専門プログラムやえこふクリニック パフォーマンストレーニングをご案内しています。「もう片方の手」の練習を、自分一人ではなく、専門家の視点と並べて積み上げていきたい方のための場です。

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まとめ

  • 「待てない」を実践に変える技法を、スキル獲得のステップと呼びます
  • 3つの問いは、(1) いつもの自分なら何秒で動いていたか (2) 今日はいつもより何秒長く待てるか (3) 3秒のあいだ自分は何をするか
  • 1問1分、合わせて3分。「ド」を5回鳴らすくらい小さな一歩から始めるのがコツです
  • 完璧を目指さない。3日続けば上等です
  • 独りで抱え込まなくてよい。専門家と一緒に整理する選択肢があります

監修:Dr.EKO博士(医師・医学博士・株式会社ヤエコフ代表)

免責事項: 本記事は、メンタル思考トレーニングおよびセルフケアに関する情報提供を目的とした内容です。医療行為・心理療法ではありません。重い症状が出ている方は必ず医療機関を受診してください。

最終更新:2026年5月

Dr.EKO博士
Dr.EKO博士(YAEKOFU)
医師・医学博士。スタンフォード大学でEIを学び、スラトレ®(メンタル思考トレーニング)を創始。エグゼクティブ・医師・リーダーの心身パフォーマンス向上を支援しています。