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お金との関係を再設計する3つの問い|スラトレ®お金ワーク

「貯める」「使う」の二項対立を超えて、お金との関係を再設計するための実践です。本記事では、メンタル思考トレーニング(スラトレ®)の視点から、3つの問いを順に置きながら、お金を「動き」と「役割」で見直していく手順をお伝えします。投資の本も家計の本も読んできた方にこそ、最後の選択肢として読んでいただきたい内容です。

Q1. なぜ「貯める・使う」の二項対立では、息苦しいのか

理論編・体験編を読み終えたあと、こんな感覚が残っている方が多いのではないでしょうか。

「言っていることは分かった。でも、実際にお金の判断をする場面になると、結局『貯めるか・使うか』の二択に戻ってしまう気がする」

頭で分かっても、判断のフレームが変わらない。これは、あなたの理解が浅いからではありません。

お金の話題では、世間で「貯める vs 使う」という二項対立が、長く繰り返されてきました。「貯金が大事」「いや、使ってこそ生きる」「節約だ」「いや、消費して経済を回せ」── この二項対立の声を、子どもの頃から、テレビで、雑誌で、家庭で、何度も聞いてきました。聞いてきたものは、本人が選んでいなくても、判断のフレームとして身体に染み込みます。

身体に染み込んだフレームを、頭の理解だけで書き換えるのは、難しい作業です。たとえるなら、長年慣れ親しんだ家のキッチンを、急に新しい配置に変えても、夜、暗闇で水を飲もうとした時には、昔の場所に手が伸びるのと同じです。頭は新しい配置を覚えていても、身体は前の配置で動こうとします。

ご相談に来られる方の中には、こうおっしゃる方が多くいらっしゃいます。

「お金を『動き』で見るという考え方は、頭ではすごく腑に落ちた。けれど、いざ家計の判断をする場面になると、また『貯めるか・使うか』に戻ってしまう。何度も同じ場所で行き止まりになる」と。これは、決して珍しい変化ではなく、面談の場では同じような声を、何度もうかがってきました。

これからお渡しする3つの問いは、判断のフレームを「貯める vs 使う」から「動きと役割」に書き換えるための実践です。それぞれ、紙に書き出して10分前後。最初の負荷としては、これで十分です。

Q2. 資金循環という考え方

実践に入る前に、ひとつだけ言葉を共有させてください。

これから紹介する3つの問いは、すべて「ある一つの見方」を取り戻すためのものです。その見方は、家の中の水循環と似ています。

家の中で、水は一箇所に留まっていません。蛇口から出て、コップに入って、喉を通り、また別のかたちで身体に戻り、汗や涙や息になって、家の外に出ていきます。あるいは、洗い物に使われて、排水溝から出ていく。出ていった水は、どこかで雨になり、川を経て、また蛇口に戻ってくる。家全体で見ると、水は一つの「循環」として動いています。

このとき、「家にどれだけ水があるか」だけで水を測る人は、いません。水道メーターを見て、家の中の総量だけ測っても、生活が成り立っているかは分かりません。大事なのは、「水が、どんなふうに入ってきて、どんなふうに使われて、どんなふうに出ていくか」── その動きの全体です。

お金も、これと同じです。

「家計に今いくらある」だけを測っても、家計が健全に動いているかは分かりません。大事なのは、「お金が、どんな入り方で入ってきて、どんな役割で家の中を流れて、どんな出方で出ていくか」── その動きの全体です。

3つの問いは、家計の総額を測るためのものではありません。お金の動きの全体を、自分の目で見直すためのものです。

この「お金が入って出ていく流れ全体の動き」を、メンタル思考トレーニング(スラトレ®)の現場では、ある一つの言葉で扱っています。

【資金循環】(しきんじゅんかん / Cash Flow Cycle)とは、お金が入って出ていく流れ全体の動きのことです。

ポイントは「収支」と同じではない、というところです。収支は「入りと出の差」です。資金循環は「入り、流れ、出のすべての動き」です。差ではなく、動き全体を見ます。動き全体を見られるようになると、「貯める vs 使う」の二項対立から離れられます。

Q3. 今日からできる3つの問い

紙とペンを用意してください。スマートフォンのメモでも構いません。文字にするのが大事です。頭の中で答えると、答えがすぐに流れ去って、輪郭が残りません。

そして、ご家庭、もしくは事業のお金の動きを、頭の中で思い浮かべてみてください。一年間のお金の動きを大まかに見渡せる範囲で構いません。範囲を一つ決めてから、3つの問いに進みます。

問い1:お金は、どんな入り方で入ってきているか

選んだ範囲のお金について、ノートにこう書いてください。

> 「私のところに、お金は〇〇という入り方で入ってきている」

たとえば、こんな書き方があります。

  • 「働いた時間に応じた給与として、毎月決まった日に入ってきている」
  • 「事業の売上として、契約のタイミングで不規則に入ってきている」
  • 「投資の配当として、年に数回まとまって入ってきている」
  • 「家族からの仕送りとして、必要な時に入ってきている」
  • 「年金として、決まった月日に入ってきている」

複数の入り方があるなら、複数書き出して構いません。

書きながら、自分の入り方の「特徴」が見えてくることがあります。「毎月決まった日に入ってくる安定型」「不規則だが大きな金額が時々入ってくる波型」「複数の小さな入り方が組み合わさっている分散型」── 自分の入り方には、自分なりの形があります。

なぜこれをやるのか。入り方の形を意識せずに、出し方だけを考えると、どこかで合わなくなるからです。安定型の入り方には安定型の出し方が、波型の入り方には波型の出し方が、それぞれ合います。入り方を見ずに、世間でメジャーな出し方を当てはめると、息苦しさが生まれます。自分の入り方の形を、まず自分で確認するのが、最初の問いです。

問い2:お金は、どんな役割を持って家の中を流れているか

問い1で書いた入り方のお金が、家の中(または事業の中)に入った後、どんな役割を持って流れているかを考えます。ノートにこう書いてください。

> 「うちのお金は、〇〇のために流れ、〇〇のために流れ、〇〇のために流れている」

ここで、「使い道」ではなく「役割」と書くのが大切です。同じ食費でも、「ただの生活費」ではなく「家族の健康を支えるための食費」と書く。同じ家賃でも、「ただの居住費」ではなく「家族が安心して帰ってこられる場所を維持するための家賃」と書く。

役割で書くと、お金の流れが立体的に見えてきます。

ある経営者の方が、面談でこの問いを書き出したとき、最初は使い道を一覧で書き出していました。けれど、書き直すうちに、「ああ、自分の家計のお金は、結局のところ『家族が安心していられる時間を作るため』に流れているんだな」と一言にまとめられました。「まとめた瞬間、肩のあたりがふっと軽くなった気がした」と話されました。これは決して珍しい変化ではなく、面談の場では同じような声を、何度もうかがってきました。

なぜこれをやるのか。役割で見えると、「貯める vs 使う」の二項対立が消えるからです。役割を持って流れているお金は、貯めることも使うことも、同じ役割の一部として見えるようになります。「家族の安心」のためなら、ある時は使い、ある時は貯める。両方が、同じ役割を支えています。対立が消えると、判断が楽になります。

問い3:お金は、どんな出方で出ていっているか

最後の問いです。ノートにこう書いてください。

> 「うちのお金は、〇〇という出方で出ていっている」

たとえば、こんな書き方があります。

  • 「毎月決まった日に、固定費として規則的に出ていっている」
  • 「気になる本や食材を見つけた時に、不定期に小さく出ていっている」
  • 「年に数回、まとまった旅行や記念日のために大きく出ていっている」
  • 「家族の誰かが困った時に、想定外のかたちで出ていっている」
  • 「将来の備えとして、毎月一定額が定期預金や投資に流れていっている」

ここで気をつけたい場面があります。「出ていく」の中には、目に見える出方(消費)と、目に見えにくい出方(備え・投資・贈与)があります。

備えとして定期預金に動いているお金は、家の外に出ていっているわけではありません。けれど、家の中の「動く水」から、家の中の「貯水池」に移っている、という意味で、流れています。

問い1で書いた入り方と、問い3で書いた出方を並べて見てください。そして、最後にこう問いかけます。

> 「私の入り方の形と、私の出方の形は、噛み合っているか」

噛み合っている場合、それで一回分の整理は終わりです。

噛み合っていない場合、「どこが噛み合っていないように感じるか」を、感覚で書きます。「入り方は安定型なのに、出方が波型すぎる気がする」「入り方は波型なのに、出方が固定されすぎている気がする」── 細かい根拠は要りません。感覚で書ければ十分です。

なぜこれをやるのか。入りと出の「形」が噛み合っていない時、心はざわつきを起こすからです。額の問題ではなく、形の問題です。形の不一致を言葉にできれば、判断の方向が変わります。

これが、3つの問いです。入り方を見る / 流れる役割を見る / 出方を見る。書く時間は、合わせて10分前後。1kgのダンベルから始める、それくらいの負荷です。

Q4. 続けるためのコツ

完璧にやろうとしない

3つの問いをすべて、隅々まで答え切ろうとすると、ほとんどの方が一度で疲れて、二度とやらなくなります。書ける範囲で、書ける言葉で、書けるだけ書く。「ここはまだ言葉にできない」と書いて止まる箇所があっても、それで一回分です。1kgのダンベルを、1秒だけ持ち上げたのと同じです。

大きな判断の前にやる

毎日やる必要はありません。むしろ、何も起きていない日に書こうとすると、書けません。家計の見直しをしようと思った時、大きな出費を考えている時、家族とお金について話そうとしている時。そういう「判断の前」に書く、という姿勢が、続きやすいです。3日続いたら、それは続いた方の部類に入ります。

「噛み合っていない」と書けることは、進歩

問い3の最後で「噛み合っていない」と書けるのは、自分の中の感覚に正直になれた証拠です。書けないまま、ただ「お金のことはなんとなくモヤモヤする」とまとめて処理していた時期に比べれば、大きな一歩です。

独りで抱え込まなくてよい

3つの問いを書き出してみたけれど、入り方も、流れる役割も、出方も、何が出てきているのか自分でも整理しきれない ── そう感じる方もいらっしゃいます。それは、努力が足りないからではありません。お金の動きの奥には、家族との関係、過去のお金にまつわる体験、職業選択の歴史が、深く絡み合っていることが多く、独りで全部ほどくには大きすぎることがあります。

シリーズ内には、理論編「お金が動く・動かないという捉え方|医師が解説する価値の流れ(理論編)」と体験編「額面は同じなのに、重さがまったく違う2つのお金(体験編)」もあわせてご用意しています。関連する実践として「投資家的時間感覚を整理する3つの問い」「感情と論理を切り分ける3つの問い|借金・貸金の整理ワーク」もご用意しています。独りで読み進めながら整理してみるのも、一つの選び方です。

そして、こうした「動きと役割で見直す」というワークの集大成は、シリーズ全体の核心テーマである「シリーズ核心:待つ筋力を育てる最終実践|やえこふクリニックの選択肢」につながっています。

それでも独りで進めるには重い、と感じるときは、専門家と一緒に整理する選択肢があります。


やえこふクリニック パフォーマンストレーニングのご案内

この記事の実践ワークを試してみても、変化が起きにくいと感じる方もいらっしゃいます。お金の動きの奥には、家族との関係、過去のお金にまつわる体験、職業選択の歴史が、深く絡み合っていることが多いからです。一人で見えにくい部分を、対話の中で見えるようにする時間が、役に立つことがあります。

やえこふクリニックでは、経営者・医師・リーダー層向けに、Dr.EKO博士(医師・医学博士)が監修するパフォーマンストレーニングをご案内しています。「あらゆる方法を試したけれど、最後にもう一度整理し直したい」という方のための場です。

やえこふクリニック パフォーマンストレーニング案内


まとめ

  • お金との関係は、「貯める vs 使う」の二項対立では息苦しくなります
  • 3つの問いは、判断のフレームを「動きと役割」に書き換えるための実践です
  • 問い1:お金は、どんな入り方で入ってきているか
  • 問い2:お金は、どんな役割を持って家の中を流れているか
  • 問い3:お金は、どんな出方で出ていっているか
  • 入り方の形と出方の形が噛み合っているかどうか、最後に確認します
  • 完璧を目指さない。大きな判断の前にやる。3日続けば上等です
  • 独りで抱え込まなくてよい。専門家と一緒に整理する選択肢があります

監修:Dr.EKO博士(医師・医学博士・株式会社ヤエコフ代表)

免責事項: 本記事は、メンタル思考トレーニング(スラトレ®)およびセルフケアに関する情報提供を目的とした内容です。医療行為・心理療法ではありません。重い症状が出ている方は医療機関の受診をおすすめします。投資判断の助言を目的としたものではありません。

最終更新:2026年5月

Dr.EKO博士
Dr.EKO博士(YAEKOFU)
医師・医学博士。スタンフォード大学でEIを学び、スラトレ®(メンタル思考トレーニング)を創始。エグゼクティブ・医師・リーダーの心身パフォーマンス向上を支援しています。